嫁ぎ先は水神様~ただ身を投げただけなのに~
難しい顔をするとき。

それはそうだ。

信じたいけれど、信じられない話、だ。


「そこで、私は水神様の妻になったの。」

「契は結んだのか。」

「結んだ。」

思えば、るか様に抱かれたのは、あの時だけだった。

「でも、私はまだはやてが好きだった。」

「つきとはやては、結婚の約束をしていたものね。」

「うん。それが、水神様の心を悩ませて、結局干ばつも直せなかった。」

「つきは、水神様と干ばつは、関係ないって言ってなかった?」

「そうなの。いくら水神様でも、気候までは直せないみたい。」

ときは、うーんと悩んでいた。

「だとしたら、この村に代々伝わってきた生贄の儀式は、本当はいらないって事?」

「そうよ。」

私は、はっきりとそう言った。


干ばつは、るか様では直せない。

だったら、生贄なんていらないのよ。
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