愛を知らない操り人形と、嘘つきな神様
その後、俺と阿古羅は咲坂達と分かれ、UFOキャッチャーでポテトチップスをとったり、レースゲーム機なんかをしたりして遊んだ。
早く家に帰らないと父さんに殴られると分かっていたのに、対戦ゲームで勝った方が次にするゲームを決めるだとか、負けた方がお菓子のゴミを捨てに行くだとかそんなよくわからないルールを作って、何時間も馬鹿やった。
そうやって俺は、酷い現実から目を背けたんだ。
「あー楽しかった! ごめんな? 短くて済むとか言ったのに、結局二時間もゲーセンつき合わせちまって。流石にそろそろ帰らないとだよな?」
阿古羅がそう言って、申し訳なさそうに顔の前で手を合わせる。
時刻は、午後六時を回っていた。
「……まあ、うん」
――帰りたくない。
できることなら、このまま明日の朝まで、阿古羅と一緒にいたい。
でも、帰らなきゃ。
「俺はあんな家、一生帰んなくていいと思うけどな」
「……でも、他に行く場所ないし」
今にも消えそうなくらい弱々しい声で、俺は言った。
「あるよ」
「え?」
「俺の家来ればいいじゃん」
阿古羅はそう躊躇いもなく言い放った。
「それは……」
居候なんてしたら、父さんを凄く怒らせるに決まっている。そんなの絶対ダメだ。
「やっぱ来ない?」
「うん。ごめん」
「フッ。謝んなくていいよ。仲良くなったばっかなのに同居提案されても戸惑うよな」
「……うん」
「海里、今日何で俺がお前をゲーセンにつき合わせたと思う?」
腕を組んで、阿古羅はいう。
「え。わかんない」
「実感して欲しかったからだよ。自分の環境の異常さを。そして思い出してほしかった、外の世界の楽しさを」
「……外の世界の楽しさ?」
俺はただ阿古羅の言葉を繰り返した。
「おう。プリのラクガキとか、ゲームすんの楽しかっただろ? そういうの感じてもらいたかったんだ。それで生きるのは楽しいことだって実感して欲しかった」
「……生きるのは、楽しい」
今にも消えそうな声で呟く。
虐待されるようになってから、そんなこと一度も考えてなかった。
「そう思えた?」
俺の顔を覗きこんで、不安げな様子で阿古羅は言う。
「……そう、だな。つまんなくはなかったな」
俺はそれに、浮かない声を取り繕って頷いた。
そうしないと、取り繕わないと、欲が出てしまいそうだったから。
本当は凄く楽しかったけど、そう言ったら、もっと遊びたいと思ってしまいそうだったから。