わたしが最愛の薔薇になるまで
 葉室は、感動した様子でグラスを手に取った。

 咲が注ぐ白ワインは、ほんのわずかに濁りがある。
 私のグラスには蕾が、別の瓶から同じ酒を注いでくれたが、同じラベルなのにこちらは澄んでいた。

 私の背に、悪寒が走った。

 そっと蕾を見上げる。無表情をよそおった彼の目は、鋭い怒気を宿して葉室を睨みつけていた。
 咲はというと、恍惚の表情で彼を見つめている。こちらも目は笑っていない。

 葉室は、二人の敵意に気づかずに、ぐっとグラスの酒を飲み込もうとした。
 とっさに、私は叫ぶ。

「飲んではいけませんっ」

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