夜を照らす月影のように#1
僕は、前世では小説家だったんだ。

この世界には、機械が無いから紙に書くしかないんだけど……でも、僕は字を書くのが好きだからいいんだ。

「……そういえば、リオン……どこに行ったんだろ……」

朝起きてから、ずっとリオンの姿を見てない。リオンは、どこかに出かける時は必ず僕に声をかけるはずなのに……。

僕は使っている間、魔力を僅かに消費し続けるけど、インクなしで文字が書ける万年筆を机に置く。

その時、後ろから何かが落ちる音がして、僕は後ろを向いた。

「え……?」

床には、一冊の本が落ちている。僕は、椅子から立ち上がると本を拾った。

「……これ、僕の書いた小説だ……」

表紙を見てみれば、表紙には『闇を纏いし少女に光を』と書かれてある。

この本は、僕のデビュー作。道化師を演じる少女が優しい少年に救われるという恋愛もの。

「……」

僕は、久しぶりに読み返そうとこの本を開く。次の瞬間、僕の目の前は真っ暗になった。



「……」

僕が目を覚ますと、僕は森のどこかで蹲るように座り込んでいた。

「ここは……?」

僕が辺りを見渡すと、僕の後ろにはボロボロの家が建っている。

「……」

僕は立ち上がると、歩き出した。

ここはどこだろう。僕の家も森の中にあるけど、風景が違う。
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