夜を照らす月影のように#1
しばらく歩いていると、崖の上に出た。僕はその近くにある木の太い枝に飛び乗ると、そこから町を見下ろす。

「……この風景、僕は知ってる……?」

そうだ。ここは……僕の書いた『闇を纏いし少女に光を』に登場する主人公の暮らす町だ……。

「でも、どうして……?」

僕が誰もいない町を見下ろしていると、どこからか雷鳴が轟いた。

「……っ!?」

僕が驚いて辺りを見渡すと、僕の視界に白髪の男性が映る。良く見ると、リオンだ。リオンは、何かに向かって必死に矢を放っていた。

「……あれは……?」

リオンの目線を辿ってみると、そこには紫の液体……?をドロドロと全身から流している怪物がいる。

「何これ……」

僕が怪物を眺めている間、リオンは怪物に向かって矢を放った。その矢は、怪物に当たると溶けていく。

「……怖っ」

というか、眺めている場合じゃないよね……何とかして怪物を倒さないと……でも、どうやって?僕は、何も出来ないダメ人間。リオンの足を引っ張ってしまうかも……。

一度マイナス思考になったら、戻れない。というか、僕はマイナス思考にしかならないんだけどね……。

リオンはもう動けないのか、木にもたれかかるとズルズルと座り込んだ。

「……」
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