私の婚約者には好きな人がいる
間水の実家は不動産業を営んでいて、金持ち相手の国内物件ならだいたい把握している。

「おかしいな。全部リストアップしたんたが」

間水は髪の毛をかきむしった。
所有者の名前を変えているかと思い、恭士さん名義の物件も探ったが、見当たらない。

「さすがに簡単にはいかないか」

イライラしながら、暗くなった窓の外を見た。
今頃、どうしているだろう。
泣いているかもしれない。

「バカね。冷静になりなさいよ。正攻法で探せるわけがないでしょ」

「中井!?どうして間水のマンションに?」

「そんなこともわからないくらいおめでたい頭になったの?」

「俺が海外事業部に無理矢理戻した辺りで惟月は気づいているものだとばかり。俺達は付き合っているんだ。その、何も言わなくて悪かったな」

「言わなくてもわかるでしょ?幸せボケもいいところね」

言いたい放題だった。

「そうね。私を訴えるのをやめてくれるなら、協力してあげる」
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