私の婚約者には好きな人がいる
気がつくと、数歩先に惟月さんがいた。

「す、すみません」

「いいよ。ほら」

手を差し出してくれた。
これは……
手を握ってもいいということ?
緊張気味にそっとその手に触れると、惟月さんは私の手を握り、手を引いてくれた。

「しっかりしているようで、ぼんやりだからな」

手を繋いだまま、ペンギンを二人で見た。
天気がいいからか、ペンギンは小さなプールにとびこんで泳いでいた。

「あの、私、ぼんやりしていますか?」

「ああ。ぼんやりというよりはのんびりかな。気がつくと自分も同じペースになっているけどな」

そう言った惟月さんは同じ速さで歩いてくれていた。
それが優しい。
嬉しくてつい、顔を見上げてしまった。

「どうかした?」

「いいえ。なにも」

惟月さんは不思議そうに首をかしげていた。
猿やゾウ、キリンを見て、ふれあい広場で馬やウサギを撫でた。

「惟月さん。虎の赤ちゃんと記念撮影できるみたいですね」

「撮る?」

「はい!」
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