仮面夫婦の子作り事情~一途な御曹司は溢れる激愛を隠さない~
3.そんな顔させたくない



入籍から二週間が経った。
風雅と私の生活は、特に変わりなく回っている。

平日、ともに風雅の作った朝食を取り、風雅は出勤。私は掃除や洗濯程度の家事をして、パソコンを起動。時差一時間の台湾現地とやりとりしながら、在宅で仕事を開始。
そのまま夕方には仕事を終え、のんびり過ごし、ひとりで眠る。もともと早寝なもので、深夜に風雅が帰宅する頃には夢の中ということが多い。夜中に風雅が隣に入ってくる気配は感じても、
眠すぎてお帰りも言えないし、風雅は朝食のために私より早起きするので、ベッドの中で顔を合わせたのは一週間前の同衾初日だけだ。
この調子ならあと二週間の新婚生活も乗り切れるのでは?

当初の約束通り、入籍からひと月が過ぎたら私は一度帰国することにしている。
内装関連の仕事は、図面はもらっても現地で見たい場合も多い。打ち合わせもリモートでできるとはいえ、実際に会って話した方がニュアンスが伝わりやすい。そう言った仕事は、あと二週間後に台湾に戻ってこなすことにしている。

実を言うと、次に日本に帰国する予定を、私はたてていない。
入籍はした。
ひと月は新婚生活を送る。これで最低限の義理は果たしたと思う。あとは当面別居でいきたい。

風雅は私を好きだとは言っているけれど、遠距離になればまた以前の距離感に戻れるのではないだろうか。
なにより、風雅は現在多忙も多忙。さらに毎朝食事を手作りするし、ベッドだって共用しているからのびのび眠れない。私がいない方が絶対、生活はラクなはずだ。
数ヶ月……可能なら数年別居婚をしてみて、お互いが本当に生活に必要か見定めればいい。

……なんて、これは私のずるい逃げ口上だろうか。
風雅が本気で、何年経っても私と結婚生活を望むとわかっているくせに。
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