クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む~運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です~
「仕事の範囲ではいくらでもサポートできても、あいつが本当に求めているものは提供できないのよね。それについては、あいつ自身も藻掻いているのを自覚しているようだったわ」

「もう過去の話だからね?」と前置きをして、亮子さんは続けた。

「雅己はね、とにかく女にはルーズ…いやいや、モテまくってたのよ。無理ないわよね、あんな外見で御曹司とくれば」
「それは…私も知っています」

私はクラブで見た様子を思い浮かべながら苦笑いを浮かべた。

「あいつも社交的で気が多い男だから悪気がない。そして女たちもそこを魅力に感じてしまう。雅己はそういう生来のモテ男で恋を楽しんでいた。…でも言ってしまえば、本気になる相手と巡り合えなかったのね。それが、よ?」

ぷくく、と愉快そうに亮子さんは失笑した。

「今は芽衣子ちゃんにぞっこん」
「え…」
「『俺にはこの人が必要だ』って私と高田にあなたのことを熱弁した時なんか笑っちゃったわ。『秘書じゃなくて妻の間違いでしょ』ってツッコんじゃったわよ。でも私も高田も、あいつに恩がある分、すごく嬉しかったわ」

亮子さんは私をじっと見つめると、にっこりと笑った。
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