溺愛甘雨~魅惑の御曹司は清純な令嬢を愛し満たす~



小一時間ほど母と会って店に戻ると、芽衣子はすべてを選び終わっていて、今は試着している最中だという。

いい頃合いに戻ってきた。
わくわくしながら待っていると、

「お待たせしました、おぼっちゃま! 見てください、お連れ様、とってもよくお似合いですよ」

恰幅のいい山田さんの後ろで、和装に身を固めた芽衣子が立っていた。

その完璧と言える美しさに俺は息を飲む。

涼しげな黄色地の着物と薄藍色の帯は想像以上によく合っていた。
対象色できりっと引き締まった装いは、艶のある黒髪を結い上げたすっきりとした髪形も相まって、いつもは穏やかな雰囲気に満ちた芽衣子を粋でそれでいて可憐な女性へと変え、慎ましく抑えていた聡明さが瑞々しく解き放たれたかのような印象を与えた。

和装に慣れていない現代女性はいざ着物を着るとまるでベールを被ったかのように奥ゆかしく変身するが、芽衣子の場合は逆と言えて、持ち前の魅力が全面に引き出されるようだった。

恐らく、幼い頃から沁みついた大和撫子としての本領が、着物を着ることで本格的に発揮されるからなのだろう。
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