溺愛甘雨~魅惑の御曹司は清純な令嬢を愛し満たす~

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「どうかな?」

山田さんに一式を揃えてもらい着替える。

大和撫子の隣を歩くのだから、簡略などせずに羽織もきちんと身に付ける。
ぱりとした夏羽織を纏って立ってみせると、芽衣子は頬を赤らめながら微笑んだ。

「とても素敵。よく似合っているわ」
「よかった。じゃあ、行こうか」

支払いを済ませて、俺達はこのままデートと決め込むことにした。

綾部屋にはランチをとってから訪問したため、再び銀座の通りに繰り出した時には、時刻は十六時を回っていた。

夕食には早いし、かといって今からどこかへ行ってのち夕食となると少し遅くなる。

芽衣子はどっちがいいだろう。
訊いてみると、彼女は少し考えて、

「あのね…」

もじもじしだした。

「うん?」

その様子が可愛くて、にこにこしながら促すと、

「今夜十九時からなんだけれど…、歌舞伎座で新演目の初公演があってね、それを観に行けたらなって…」

さすが芽衣子。歌舞伎鑑賞を嗜むとは。
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