追憶ソルシエール

ひと区切りされた言葉の続きを、横顔を見上げながら待つ。茶色くなってしまった落ち葉を意図せず踏めば、ぱり、と乾いた音が鳴る。






「彼氏? 隣に座ってたやつ」



ちら、と横目に向けられた視線は交わるとすぐに正面へと流された。




「……うん、そうだけど」



これといって隠す必要もない。急にどうしてそんなこと聞くんだろうかと疑問に思いながら肯定をすれば、「ふーん」とこちらを見ることなく単調な返事をされた。





「なんで?」

「いや? 優しそうだなーって」



気にならないって。べつにって言ってたくせに。

フツフツと心の中に得体の知れないものが湧き上がる。







「やさしいよ、すごい」


私だけ振り回されているような気がして。それがなぜか嫌で。






「凌介くん、すごく優しくしてくれる」


視線を感じた。だけど気付かないふりをして前を向いまま口を開いた。





言わなくてもいいことまでつい言葉になって出てしまう。


少しの静寂が続いて、徐々に冷静になれば、私はなにをムキになっているんだろうかと後悔した。西野くんは私の恋愛事情が気になって聞いてるんじゃない。それはこの前の勉強会で本人が断言して分かりきっていることだ。ただ、家まで帰る数分の話題作りのためだったかもしれないのに。






「そいつのこと、好きなの?」



鋭い眼差しがこちらを射抜く。思わず立ち止まりそうになった。



一体何を考えているんだろうか。全く分からない。なにを当然のことを聞いているのか。
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