追憶ソルシエール
はっきりと、意志を込めて真っ直ぐ捉えた。
西野くんの言うことは間違ってる。
ほんとに、ちゃんと好きだった。中学生のわたしなりに、一生懸命恋をしていた。西野くんと過ごす日々に一喜一憂して。初めて手をつないだときは心臓がバクバクするほど緊張して。
『緊張してる?』
その言葉でもっと緊張が膨らんで、顔が熱くなって、つないだ手と手からこの緊張が伝わってしまうんじゃないかと思いながらも軽く頷いたら、ほっとしたように笑みを零す。
『俺も同じ』
その言葉ひとつで、わたしだけじゃなかったんだと少しだけ安心して。
あのときのわたしたちの気持ちは決して一方通行なんかじゃなかった。それなのに。
「今さらなに?」
冷たい視線を向けてくる。
「今さらって、西野くんがあんなこと言うから、」
納得いかないのだ。
今は違っても、あのときの気持ちは偽りようのない、確かに本物だった。ちゃんと好きだったのに。ほんとに好きだったのに。
誤解を解きたいだけじゃない。ただ、わたしの気持ちが全然伝わってなかったんだと思うと悲しくて、虚しくて、悔しくて。
心が砕けそうだ。