追憶ソルシエール
ドアノブに手をかけたままの凌介くんは、一度手元に視線を落とし、そしてまた私を見る。くい、と手首を捻って押しても引いてもガチャガチャと騒々しい音が響くだけだ。
「空いてないみたいだね」
「おかしいね」
鍵が閉まってるなんて聞いてない。いつも空いてるっていうのは那乃の誤解なのか、それともたまたまなのか。
「そこの空き教室で食べよっか」
「そうだね」
登った階段を下ってすぐの教室。
移動教室の授業でよく使う教室だ。
「でもむしろよかったかも。自分で言っといてなんだけど外で食べるなんて寒いよね」
適当な椅子に座り、窓の外を見て思った。いくらお昼時とはいえ12月だ。鍵が空いててもすぐに屋内に避難していたかもしれない。今はまだ寒すぎる。
「確かに。また暖かくなったら来よ」
外を見て微笑む凌介くんに、うん、と頷く。
「そういえば一緒にお昼ご飯食べるの久しぶりじゃない?」
「たしかに。いつぶりだっけ」
記憶を巡らせる。基本的にはほとんど毎日那乃と一緒に食べているから。
「あ、体育祭のとき以来?」
「そうだ」
「わー、体育祭のときまだ暑かったのに」
「ほんとだよ。もう寒いなんて」