追憶ソルシエール
ミルクティー色の髪をしたその人は、恰好を見るにこの学校の生徒らしい。
「あれ、どっかで見たことあるよーな……」
独白ともとれるその台詞。
明るい髪色に、万人受けするような眉目秀麗さ、着崩された制服。一度見たら忘れられないと思うけど、わたしはその顔を覚えていない。
じーっと見つめられて、その瞳から逃げるように視線を逸らすと「まー、いーや」とちいさな呟きが聞こえた。
「もしかしてだれか待ってる?」
「……あっ、そうです」
「じゃー、おれが呼んできてあげよっか。なんて名前?」
困っていたところに現れた救世主。首を傾げるその人に、口を開いて。
「えっと、西野────」
「由唯、なにしてんの?」
直後、鼓膜を震わせたその声によって不自然に言葉が途切れた。
と、同時にわたしの心臓はどくん、と大きく跳ね上がる。
"由唯" と呼ばれた救世主は、声が聞こえたほう────校舎のほうに視線を移して。
「おー、紗凪いいところに来たー。人探し手伝ってよ」
ここからその姿は見えない。だけど嫌でもわかってしまう。
ちら、と着崩された背中の後ろから顔を覗かせた。片手でイヤホンを外しながらアスファルトの上を歩いてこちらへ向かってくる姿。
その双眼がわたしを捉えて、少し目を見開いたあと、
「……岩田?」
そう、名前を呼んだ。