追憶ソルシエール
「あっ、いや、あのさっきのはそういう意味じゃなくて。全然、嫌とかじゃなくて、」
生じてしまった誤解を解こうと必死に弁明する。
焦りも伴い、なかなかうまく伝えられずにいると、目の前から「ふはっ」と笑う声が聞こえて、無意識のうちに下げていた視線を恐る恐る上げた。
「ならいいじゃん。帰ろーよ」
満足気に笑みを浮かべて足を進めた彼に、中学時代の彼が重なった。
その背中に着いていったはいいものの、なんとなく隣に並ぶのは気が引けて一歩斜め後ろを歩く。
「岩田って電車通学?」
「うん、」
「おっけ」
そう訊いてきた彼はきっと駅まで一緒だろう。さっき駅から学校に行くまでに通ってきた道のりを歩いている。
まさか、彼とふたりで帰ることになるなんて、ほんの数分までは思ってもいなかった。
帰ろうと言われた手前、何か話があるのかと思ったけれどそうでもないらしい。かといって、わたしから話しかけようにもこれといった話題が見つからず、ただただ無言で歩く。