追憶ソルシエール
再び歩き出した西野くん。その背中に吸い寄せられるようにしてわたしも足を動かす。
「じゃー授業終わってから岩田の学校行くわ」
「えっ、いいよ大丈夫! わたしが取りに行く」
「なんでよ、今度は俺が行く番でしょ」
「そう、かもだけど……」
「なんか問題ある?」
「…………」
「べつにないでしょ。だから俺が行く」
適当な理由が思い浮かばず黙り込んでいれば、半ば強制的に決められた。
後ろめたいことなんてひとつもない。昨日は偶然会っただけで、今日は借りた傘を返しに来てるだけ。ただ時折、凌介くんの顔が頭に浮かんでくる。
明日、西野くんが学校に来て、可能性は低いけれどもしふたりが鉢合わせたらと考えると、わたしはどうしていいのかわからない。咄嗟の対応に困ってしまうと思う。
だからやっぱりわたしが────、と口を開きかけて。
「……あー、もしかして彼氏いたりする?」
思いもよらない発言が耳に届いた。
「なんで、そんなこと聞くの……?」
「んー俺に来られるの避けたそうだったから? あとただ興味あるだけー」
「どうして、」
「ふつーに気になるじゃん」
ゆらり、二重の目がわたしを射抜く。その瞳に捉えられたわたしは、一瞬たりとも目を逸らすことができない。
「俺と別れたあと、どんなやつと付き合ってんのか」