追憶ソルシエール
地面を見つめていれば上から「ふっ」と笑い声が降ってきて。恐る恐る顔を上げれば、怒る気配はまるでない、口元に笑みを浮かべた西野くんがいる。
「俺それくらいで怒らないんだけど」
綺麗な二重の目を細めた後、「岩田そんな心配してたの?」ははっと笑うその姿が中学生の頃と重なった。
約束を覚えていたら、もちろん休み時間中に日誌を書き終えて西野くんのことを待たせずに済んだのに。
「これ、」
西野くんに向かって手を伸ばせば、「ん?」と首を傾げられた。
「……待たせちゃったから。先生からもらったものだけど、それでもよければ」
500mlサイズのペットボトルを差し出す。ずっと手に持っていたから、少しぬるくなっているかもしれない。
「いーの?」躊躇っているような声色に「うん」と頷く。
「さんきゅ」
ペットボトルを受け取った西野くんは「お、あったか」と僅かに頬を緩める。
「……ごめん、ほんと遅くなっちゃって」
夕日が西野くんを照らす。「岩田先に帰ってなくてよかったわ」そう零す姿が眩しくて、思わず目を細めた。
大丈夫。あの日、わたしたちが再会した日よりきっとずっと上手に話せてる。ちゃんと目を見て話せる。もう、大丈夫だ。