毒林檎令嬢と忠実なる従僕〜悪役はお断りなので冷徹な狼従者を甘やかしたら、独占欲強めに執着溺愛されました〜

 王都にあるディートグリム公爵邸を訪れてきたと報告にやって来た弟は、普段の堅物感をどこかに置き忘れたように上の空だった。

『兄上なら、謝罪の品に何を贈られますか? その……恥ずかしながら、ご令嬢が何を好むのか検討もつかないのです。ティアベル嬢には……その、適当な謝罪をして嫌われたくなくて』

 この間まで、怖い夢を見たので一緒に寝てほしいとベッドに潜り込んできていたレグルスの成長に、ユーフェドラは目を丸めた。

 頬を染めながらどこか落ち着かない様子の弟は、『やはり珍しい林檎の樹を栽培するべきでしょうか?』と斜め上の提案をする。

 妖精植物が好きだというティアベルならそれも喜びそうだが、薬草学が苦手で不器用な弟に植物の栽培は難しいだろう。謝罪の品を届けるより彼女が誰かと婚約を結ぶ方が早そうだ。

 王太子として、ただひとりの兄として、レグルスの自覚するまでに育っていない恋心を応援したいと思ったユーフェドラは、『そうだねぇ』と考える仕草をする。
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