あなたとはお別れしたはずでした ~なのに、いつの間にか妻と呼ばれています


四年前、和花も含めて三人はまだ二十歳だった。
  
和花はおっとりとしたお嬢様で美大に通っていたし、大翔は漫画ばかり描いていた。
佐絵子はもともと芸術家肌で、どうも世間に疎い。
そんな三人に、法律や経済のことなどわかるはずもなかった。


和花の父、奥村圭介(おくむらけいすけ)は銀座にある有名な画廊のオーナーだった。
四年前は絵画に投資するのがブームになっていて、奥村画廊も海外まで大きく商いを広げていた。

ひとり娘だった和花は絵の才能があると父に言われて、幼い頃から様々な勉強をしていた。
将来は画廊を継いで欲しいと奥村は願っていたのか、和花に美しものを見る目を養うためにできる限りの教育を施した。
多くの美術品を鑑賞したり、画家と交流するなどしたのもそのためだろう。


< 10 / 130 >

この作品をシェア

pagetop