あなたとはお別れしたはずでした ~なのに、いつの間にか妻と呼ばれています


内輪だけの結婚式で、参列したのはハワード一家と晃大、大翔と佐絵子の夫婦、シッターの高原、そして、井上と莉里のカップルだけだった。

樹がすぐに式を挙げたいと言うので、ウエディングドレスはオーダーしていては間に合わない。
それで店で買い付けておいたアンティークのドレスの中から選んだのだ。
アイボリーのエンパイアラインのドレスで、豪華な刺繍と古典的なレースの上品なデザインだった。
それが想像以上に和花に似合っていて、莉里は気に入ったらしい。

披露パーティーにはギャラリーのスタッフも参加して、和花らしいアットホームな式と披露宴だった。

「ドレスの件、承りました。お式はいつごろでしょう?」

「秋を予定しているの」
「それでは、夏までに買い付けに行く予定ですから、莉里さんに似合いそうなドレスを探してきましょうね」

「わあっ。嬉しい! あら、でもロンドンに行って大丈夫ですか?」
「どうして?」

「玲生くんと真莉愛(まりあ)ちゃんはお留守番なの?」

「いえ、家族で行こうかって話してるんです」
「わあ~ハネムーンかしらあ」

大袈裟に感動している莉里に、和花は唇に人差し指をあてて『内緒』のポーズをしてからそっと言った。

「ちょっと、遅めのね」



< 128 / 130 >

この作品をシェア

pagetop