あなたとはお別れしたはずでした ~なのに、いつの間にか妻と呼ばれています~


「キリがないわ~」
「人生長いから大丈夫ですよ。井上さんとよく話し合ってみてくださいね」

「はあい、ありがとう、和花さん」

莉里は晴れやかな表情を取り戻していた。

「幸せは続くのか……」

アンティークショップから外に出て莉里を見送っていた和花は、彼女の問いかけが妙に胸に残っていた。
その呟きが聞こえたのか、彼女の後ろから樹の声が聞こえた。

「なんの話?」

「あ、お帰りなさい。早かったですね」

樹がいつもより早い時間に帰宅したようだ。

「玲生に言われてるからね。真莉愛が起きてる時間に帰って来いって」
「あらあら、お兄ちゃんが我が家の司令塔かしら」

少しネクタイを緩めながら、樹は嬉しそうにしている。玲生に指示されたのが嬉しいのだろう。

「私、もう少しお店にいますから、先に部屋へ上がってください」

和花の『我が家』はかつては広すぎた空間だったが、今では家族四人で暮らすには狭くなってきたくらいだ。

「はいはい、奥様は今日もお忙しいですね」

「そんな奥さんは、お嫌ですか?」

悪戯っぽく微笑みながら和花が問いかけた。

「とんでもない、最高の妻ですよ」

「フフッ、お上手ですこと、旦那様」
「玲生と真莉愛と君がいる。最高じゃないか、和花」

樹は和花の頬に短いキスをすると、ビルの裏口に向かって行った。
きっと三階のエレベーターホールでは玲生がお待ちかねだろう。
真莉愛はシッターの高原と遊んでいるはずだ。

この幸せを手にするまでにどれだけの苦しみや悲しみ、そして喜びがあったか数えきれないくらいだ。
和花と樹も、何度も目の前に現れるハードルを飛び越えてきた。

(樹さんの愛があるから大丈夫。私も彼を愛しているから前を向けるの)

これからも幸せは続く……続いていくように願いながら、毎日を大切に暮らしていこうと和花は思った。









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