あなたとはお別れしたはずでした ~なのに、いつの間にか妻と呼ばれています~
ちょうどオークションに参加するためにロンドンに来ていた岸本は、タクシーを飛ばしてやってきた。
「万里江さんからの呼び出しなんて、何事ですか?」
万里江と面識のある晃大も、流石にいきなり呼ばれて戸惑っていた。
「仕事中だったらゴメンなさいね。あなたの可愛い人の一大事なの」
万里江は慌てている晃大を見て、少し含みのある言い方をした。
「和花、自分でキチンと話なさい」
それから、俯いていた和花に目を向けるときっぱりと言った。
「はい」
和花は晃大に妊娠を告げるのに恥ずかしさもあったが、これからのことを相談しなければならない。
「あの、今日、万里江さんが病院に連れて行ってくださって」
「ええっ⁉ 和花ちゃん、体調が悪いの?」
晃大は母の又従兄妹だ。病院と聞いて、和花が母のようになったかと思ったらしい。
「いえ、病気ではなくて……妊娠していました」
晃大が絶句した。
「和花が? 妊娠?」