あなたとはお別れしたはずでした ~なのに、いつの間にか妻と呼ばれています~
深呼吸をしてから、晃大が確認するように和花に尋ねてきた。
「樹くんの子……だよね」
「はい」
「彼とは、別れてたよね」
「はい……」
三人の間に、酷く気まずい空気が流れた。
和花は、あの十二月の寒い朝を思い出していた。
樹のマンションを出た和花は、自分から樹を求めてしまったことで自己嫌悪に苛まれていた。
和花はアパートに帰ったら彼が訪ねてくるのではと思い、岸本晃大を頼ったのだ。
早朝に晃大のマンションへ姿を見せた和花に、彼はなにも聞かなかった。
ただ、年末で日本に晃大がいたからよかったものの、無計画なことだけはしないようにと釘を刺されたのだ。
和花は晃大に頼みこんで、予定を早めてすぐにロンドンへ立つことにした。
部屋に帰りたがらないし携帯を新しくするという和花を、晃大は優しく受け入れてくれた。
母が亡くなった時も、樹とのことがあった時も、晃大は面倒なことを引き受けてくれた恩人だ。
何年も和花を支えてくれてきた人に、また心配をかけてしまった。
「ごめんなさい、晃大さん。でも私、この子を産みたいんです」
和花の言葉を聞いてから、晃大はしばらく黙り込んでしまった。