砂漠の国でイケメン俺様CEOと秘密結婚⁉︎

「な、な、なにしてるんですかっ⁉︎」

思わず、声を張り上げる。

しかし、「夫」は(いぶか)しげな表情を浮かべただけであった。

——あ、彼はまだ日本語の聞き取りはできないんだな……

「What are you doing here now?」
〈今ここで、なにをしてるんですか?〉

あたしは英語で訊き直した。

「Isn't this a place where men are not allowed?」
〈ここは、男の人が入っちゃいけない場所なんじゃないんですか?〉

だって、今は花婿のいない(・・・・・・)「女だけの結婚式」の真っ最中なのだから……


すると、ファティマさんがおずおずと歩み寄って、あたしに告げる。

「Only the bridegroom can come here specially.」
〈花婿だけは特別に入ることができます〉

——ええぇっ、そうなのっ⁉︎

道理で彼が入ってきても、みんな驚かないはずだ。

って言うか……

いつの間にか、歌っていた人も踊っていた人も自然と止まり、彼の姿に釘付けになっていた。


いつもはまっすぐに垂らすという真っ白な頭巾(ゴトラ)は、今は黒の輪っか(イガール)で止めずに頭の周りでターバンのようにぐるぐる巻きにされていて、余った部分だけが横に流すように垂らされている。

そして、いつもは真っ白な貫頭衣(カンドゥーラ)だけだが、今はその上にベシュトというガウンのような長い上着を羽織(はお)っている。
彼の瞳みたいな、漆黒のベシュトだ。

そんな精悍な「砂漠(ベドウィン)の男」として正装した彼の「花婿姿」に、みんな見惚れてボーッとなっている、ってのもあるんだけれども……

今はただ、音楽だけが空々しく鳴り響いていた。


——リアルで「目が♡状態」になっているのって、初めて見たよ。

< 117 / 154 >

この作品をシェア

pagetop