砂漠の国でイケメン俺様CEOと秘密結婚⁉︎
きっと、ラジュリー自身に訊いても教えてくれないような気がするから、ムフィードさんに尋ねてみた。
そのくらいには、彼のことは「理解」できているつもりだ。
「あたしはてっきり、彼のファーストネームだと思っていたんですけど……」
だが、しかし……
なぜか、ムフィードさんは無言だ。
「What are you two talking about, Atif?」
〈アーティフ、二人で何を話しているんだ?〉
不穏な気配を察して、ラジュリーが騒ぎだした……ヤバい。
「ムフィードさん!
ラジュリーがつべこべ言うんだったら、『今夜の「初夜」はお預け』って言ってくださいっ!」
「そ、そんなぁっ⁉︎」
いつも冷静沈着なムフィードさんの声が、ひっくり返る。
一度交わした婚姻に関わる契約書は、かなり異例のことではあるらしいが、あたしの意見を大幅に取り入れて変更することになっている。
この仕事を、もうしばらく続けさせてもらうつもりだ。
(大橋さんからも『彼女には、たとえ結婚したとしても変わらずに仕事を続けてもらいたい』と言われたからね!)
せめて、あたしたちが出逢うきっかけとなったこのプロジェクトだけでも、この手で最後までやり遂げたい。
せっかく砂漠まで行って天幕で「現地の生活」を体験したんだもの。
あの「開放感」のある空間を、ホテルの客室という限られた空間とはいえ、なんとか採り入れてみたい。
そして、このラグジュアリーなインペリアルスイートだって……
——やってみたいアイディアが、際限なくあふれてくる……
「えーっと、日本語ちょっと、私には難しいですね……」
「では、英語で!」
間髪入れずにムフィードさんへと返す。
「……『My Darling』ですね」
観念したムフィードさんが、ボソッとつぶやいた。
——ま、ま、マイ・ダーリン⁉︎
あたしったら、いくら知らなかったとはいえ、公衆の面前で、彼のことそんな呼び方してたのっ?
道理で、砂漠の結婚式で部族の女性たちが沸いていたはずだ。
そういえば……
彼の方は……「私の真珠」を連発していたっけ?
——あたしたち、とんだバカップルじゃんっ⁉︎
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「砂漠の国でイケメン俺様CEOと秘密結婚⁉︎」〈 النهاية〉


