砂漠の国でイケメン俺様CEOと秘密結婚⁉︎
『私はEnglandに留学しました。帰国するまで、妻待ってました』
——いいなぁ、それって初恋からの……純愛じゃん!
あたしの人生では、もう決して叶うことのないアラビアンナイトだ。
そんなことを、つらつらと思い出していたそのとき……
『パールちゃん』
とあたしを呼ぶ声が、不意に脳裏に響いた。
すると、みるみるうちに……
さらりとしたブラウン系の髪が……
ぱっちり二重の赤褐色の瞳が……
ライトグレーのスリーピースをぴしりと着こなして颯爽と歩く姿が……
あたしの心に浮かんできた。
これからマーリク氏の「第三夫人」になるあたしは、この地では「妻」と認められても日本社会では常識的に認められないであろう。
(ムスリムだった元インドネシア大統領の第三夫人であるデ◯ィ夫人みたいな鋼の心臓を、あたしは持ち合わせていないからね)
だから日本の大使館に婚姻届を提出するつもりはないし、だからこそ、会社にも内緒にできる「秘密結婚」になり得るのだ。
そのことは、はっきりと契約書に明記してある。
それでも——