砂漠の国でイケメン俺様CEOと秘密結婚⁉︎

てっきりウォーキングクローゼットだと思って開けたそこは、あたしに与えられた寝室よりもずっと広い部屋だった。

そして、その部屋の中央には巨大な天蓋付きベッドが、どーんと置かれてあった。

——明らかに、キングサイズよりも大きなベッドだわ。

一般的にキングサイズはシングルベッド二台分の大きさなのだが、もしかしたらこのベッドはダブルベッド二台分あるかもしれない。

また、天蓋の黄金に輝く支柱には精緻な文様が彩色されていて、天蓋の四方からはエメラルドグリーンの重厚なベルベットの幕が、純白のレースとともにカーテンのように垂れている。

まさに、アラビアンナイトに出てくる王宮にありそうな「王様ベッド」だった。


それに加えて、サファイアのようなウルトラマリンブルーの壁紙や、オリエンタル調の豪華な調度品のテイストが、マーリク氏のリビングルームの雰囲気そのものだった。

ということは……

——ここって「Master bedroom(主寝室)」じゃん!


つまり、あたしが開けたドアは、この家の主人夫婦がそれぞれ持つ私室をつなぐ「コネクティングドア」だった、というわけだ。

先刻(さっき)はきょろきょろと左右を見回すことだけで精一杯だったけど、サマラさんは案内がてらマーリク氏のリビングルームからぐるりと一周してこの部屋にあたしを連れてきていたのだ。


——ミスター・マーリクはいつもここで(やす)んでいるのかなぁ?

それとも、あたしの部屋のように向こうに自分専用の、ここよりは小さい寝室があるのだろうか。

巨大な王様ベッドを見ながら、そんなことをつらつら考えてぼんやりと佇んでいたら、不意に背後から声がした。

「Excuse me,ma’am. Dinner is ready.」
〈奥様、失礼します。夕食のご用意ができました〉

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