青い夏の、わすれもの。
到着したのは3階の1番端の教室。

ここはトロンボーンがいつも練習している場所だ。

窓際の1番後ろの私の所定位置に彼は譜面台をセットしてくれていた。


「さつまくんごめん。巻き込んじゃって」


慌てて謝り楽器を構えて直ぐ様練習しようとすると、さつまくんは首を真横に振った。


「えっ?」

「楽器下ろして」

「いや、でも...」


わたしが拒むと、私より身長が高いのを良いことに、彼はひょいっと取り上げた。


「ちょ、ちょっと!」


奪還したいけど、高価なものだからむやみに手を出すことも出来ない。

私は仕方なく椅子に座り込んだ。

楽器を机に丁寧に置き、さつまくんも私の隣の席から椅子を借りて座る。

遠くから合奏が聞こえてくる。

トランペットのファーストの音がない、
いや、この大楽律という大黒柱の音がない演奏はなんだか味気なくて、あんこのない饅頭のようだった。

苺のないショートケーキのようと言わなかったのは、わたしが和菓子好きだから。

ただ、それだけ。


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