青い夏の、わすれもの。
2人席にわたしと深月さんが座り、その数メートル先でさつまくんは手すりに掴まりながら立っていた。

わたしが名前を聞くと、予想通り彼女は深月さんだった。

そして、深月さんは意外なことをカミングアウトした。


「あの、実は私、昔からトランペットに興味がありまして...」


なるほど。


「だから、さっきさつまくんに話しかけたんですね」

「ええ。トランペットの凛としていて芯が通っている音が好きなんです」


そう話す深月さんの瞳は、どんな宝石よりもキラキラと輝いていて美しかった。


「確かに、トランペットの音カッコいいですよね。ボーンと違ってメロディラインを吹くことができる花形ですし、羨ましい限りです。だからこそ、さつまくんみたいに力量がある人が演奏するべき楽器なんだと思います」


わたしは素直にさつまくんを称賛した。

近くにさつまくんがいたら恥ずかしくて言えなかったと思う。

数メートル先で大会曲を聴いてイメトレに熱中しててくれて良かった。

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