青い夏の、わすれもの。
入浴を終え、定期テストに向けて勉強をしようとテキストとノートを開いて準備をしていた時だった。


――ピロンっ。


軽快な音が小さな1人部屋に響いた。

わたしは風くんからだったらいいなと思いながらタップすると、そこにあったのは"大楽律"の文字だった。


さつまくん、こんな時間になんだろ?


さらにタップし、トーク画面が出てきた。

最後に話したのは2ヶ月前。

4月の新入生歓迎会の打ち合わせの内容がズラズラと羅列してあった。

つまり、これは事務連絡用。

2人での会話だからと言ってプライベートな内容が混ざるなんてことはない。

だから今回もどうせ練習メニューの変更点とか、明日の合奏が無くなったとかそういう連絡だと思い込んでいた。

だが、しかし...

わたしの目に飛び込んできたのは、予想に反する内容だった。


"今日もお疲れ"

"明日7時に準備室集合"

"時間厳守"

"あと、アイスはハーゲンダッツ"

"奇遇だな。オレもイチゴ派"

"ってことで、よろしく"


スタンプも絵文字さえもないけど、その文を読んでわたしの胸はじんわりと温かくなった。

さつまくんがわたしの話をちゃんと聴いてくれてたんだなって分かって、すごく嬉しくなった。

胸がいっぱいになった。

この気持ちを伝えようか迷ったけど、なんか今じゃない気がしたし、恥ずかしいから止めた。

その代わりにスタンプで"ありがとう"と"ありがとうございます"の二種類を送った。


"さつまくん、明日からご指導よろしくお願いします!"

"お休みなさい"


送信して数秒後に"お休み"とメッセージが来た。

わたしはこの不器用なやり取りを暫く見つめていた。


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