青い夏の、わすれもの。
「はい、ストップ」


早速止められた。

昨日も何度も先生に"覇気がない音だ"と言われた。

思い出すと悔しさと悲しさが胸の底から込み上げてきて泣き出しそうになる。

けど、朝から泣くわけにもいかないから必死に耐える。


「もっと遠くを見据えてパーンって放つんだ。弓道をイメージして」

「弓道?」

「そう。こっから見えるあの山を貫いて、その向こうの海と空の境界線のど真ん中を真っ直ぐ射るイメージで」

「ほぉ、なるほど」


わたしは瞳を閉じてひとまず言われた通りにイメージをしてみた。

山を貫いて海と空の境界線のど真ん中を射る...。

緑を越え、青と青の境目をスパッと快い音が貫く...。


「イメトレ出来た。なんか、イケそうな気がする」

「じゃ、もっかい頭から」

「はいっ!」


わたしは楽器を構え直した。

山と海と空をイメージ...。

青の真ん中を射る。

そう...青のど真ん中、だよ。


「1、2の3...」


――パーンパパパパーン。パッパッパパーン...。

――ボーンボボボーン。ボッボッボボーン...。


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