青い夏の、わすれもの。
わたしは楽器をメンテナンスし、片付けようとしているところで、さつまくんに改めてお礼を伝えた。


「さつまくんありがとう。お陰様で先生に毎回ストップかけられることは無くなりそうだよ」

「うん。このくらい吹ければ上出来」


さつまくんはマイトランペットをまるで赤ちゃんの頭を撫でるように優しくクロスで拭いている。

その様子を見ると、わたしは毎回思う。


「さつまくんって、ほんと、トランペット好きだよね」


思ったことを口にすると、さつまくんは3歳児が拗ねたみたいに"悪いか"と言ってきた。

そういうちょっと子供っぽいところも憎めない。

すごくいじりがいがある良いキャラしてると思う。

話しやすい人って、わたしにとってはさつまくんみたいな人のことを言うのかもしれない。

じゃなかったら、1年の時からこんな風に2人で練習なんて出来なかったと思うから。

わたしは懐かしくなって、出会ったばかりの頃の話を持ち出した。


「さつまくん覚えてる?わたしがさつまくんに初めてお願いした日のこと」


さつまくんは遠くを見るような目をした。

窓の向こうに見える青々とした木々が生い茂る山々のそのまた向こうの海を見つめるかのような、そんな目だ。


「覚えてる。すっごく強烈に」

「ふふっ、だよね」

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