秘密に恋して~国民的スターから求愛されています~
こんなはずじゃなかった。そう思ったってもう遅い。
ぐんぐん迷いなく進む手が簡単にナイトブラの上から私の胸を揉み、声が漏れる。
と、次の瞬間、拓海が私に覆いかぶさってくる。

「たく、み…」
「バレバレだよ。耳まで真っ赤にしてさ。誘ってるでしょ」
「…」

誘ってなんかない、むしろ逆だ。
拓海はベッドの上に両肘をついて私の目を見る。
そしてそのまま私の髪に指を通して、サラサラだねなんて言う。
一つ一つの動作がドラマや映画のワンシーンに思えてくる。

拓海のそれは全部演技なのでは、そう思った。

「拓海、どいてよ…寝よう明日も早いし」
「嫌だ」
「…」
「沙月の初めてって今日あった男だよね」
「そんなこと、どうだっていいじゃん」

拓海の顔色が変わるのを私は見逃さなかった。優しくて甘い雰囲気が一気に変わる。重くて痛いその空気に耐えられなくて私も自然に顔を顰める。

「よくない」
「…」
「いいわけないじゃん。俺ずっと傍にいたじゃん。いつか俺を見てくれるそう思ってた。でも違った。誰よりも沙月のこと好きだったのに、沙月は俺を男として見てくれたこともなかった」
「…それ、は」
「俺じゃない奴とキスしてセックスしたなんて本当俺どうかしそうだった」


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