恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
千秋さんは私の手をギュッと強く握ってタクシーを呼び、二人で一緒に家まで帰った。
帰宅するまで手を離してはくれなくて少し前の夏希君と同じだと思ってしまった。やっぱり兄弟なんだなぁ。

自宅へ帰宅するとすぐに私をソファへ座らせて
「聞いてもいいかな」
隣に腰を下ろした千秋さんがそういった。

「桜子は、夏希のことが好きなの?」
「へ?」

その質問に私は間抜けな声を出す。千秋さんはどこか苦しそうな余裕のなさそうな表情をしていて、そんな顔を見る機会はあまりない。

「…いえ、好きではないです。初恋の相手ではありますが」
「…」

私がそういっても千秋さんは訝しげな顔をしている。
自分の手の指を合わせるようにしてもじもじしていると、千秋さんがまた本当?と尋ねる。
私は、本当ですよと答える。

何故何度も訊くのだろう。私は、チラチラと彼の顔を見る。

「なんで俺に言ってくれなかったの?」
「…それは、キスしたこと言うのが嫌で」
「どんなキスしたの?」
「…どんなって…普通の、」

ソファに沈む体は千秋さんが更に近づいてきたから余計に沈む。体が強張るのを感じた。
伸びてきた手が私の頬を撫でる。
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