恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
千秋さんがもう一度私に訊く。夏希君って優しいのかそうじゃないのかわからない人だ。

「キスって、何?」
「あ、それは…あの、えっと…」

もう嘘をついたって仕方がない。私は観念したように目を伏せてぽつり、口を開く。

「たまたま夏希君と外で会った時に…急にキスされてしまって」
「…」
「それを黙っている代わりにデートしてほしいって言われて…ごめんなさい」

千秋さんの視線が痛いくらいに向けられ、罪悪感も相まって更に千秋さんを見ることが出来ない。
でも千秋さんは責めるような言葉を私にぶつけたりはしなかった。

「そっか」

そう言って、私の頭に手を置いた。
その手が温かくて思わず顔を上げると、私を愛おしそうに見る千秋さんと目が合う。
「とりあえず帰ろう家に」
「はい」

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