恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
自宅マンション前に車が停まった。

「ところで、どうしてあんなところに?サングラスをするほど日光が強かったわけでもないけど…」

車を降りようとドアノブに手をかけると、千秋さんが私の背中に向かってそう訊く。私は、顔を顰めたのをすぐに笑顔へ戻して彼に顔を向ける。

「…えっと、その…バイトの…」
「え?今日バイト休みだよね?それとも、倉田さんと会う予定だったとか?」
「そんなわけないじゃないですか。倉田さんは…今日はお店開けてると思いますし…」
「ふーん。アルバイト、する必要ある?俺はないと思う」
「え…」

私が何故あの場所へいたのか、の話題がせっかく逸れたと思ったのに、今度は違う話題になる。
しかも、アルバイトを辞めさせたいようで、というか今はっきりする必要がないと言われてしまう。

「だって俺たち夫婦でしょ?桜子が気を遣う必要はない」
「そうですけど…あ、お金だけじゃなくて、なんていうか、気分転換にもなるんです。喫茶店はたくさんのお客さんが来るから…接客を通して人と接することが出来るんです」
「…倉田さんも?」
「倉田さんは関係ありますか?」
「あるよ。むしろそれがメインだよ」


抑えた声が車内に響く。
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