恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
「それで不安になってたの?」
「はい…」
「それは俺が悪いね、本当にごめんね」

千秋さんは心底反省したような口調でそう言った。

「俺は最初から君が好きだったよ」
「…最初?」
「初めて見たときから気になってた。もちろん契約から始まったけど、一緒に住むようになってすぐに離したくない存在になった」
「…千秋さんが?」
「そうだよ。君の真っ直ぐにぶつかってくるところも、素直なところも全部俺を魅了する」

まるで映画のヒーローが言うようなセリフをスラスラという千秋さんに胸の奥がきゅんっとなる。
他の人が言ったら安っぽいセリフになってしまいそうなのにそれを彼が言うからこんなにもロマンティックに感じるのだろう。

私は本当ですか、と掠れた声で言う。

すぐに彼は本当だよと言って笑う。

「じゃあ…両想いっていうことですか」
「そりゃそうだよ。じゃあ、改めて言うよ。桜子、君のことが誰よりも大好きだよ」
「…あ、…はい」
「桜子は言ってくれないの?」

中高生でもあるまいし、こんなにもドキドキしたり切なくなったり、苦しくなったり、嬉しくなったり…感情が目まぐるしく変化するのは、千秋さんのせいだ。


「私も、大好きです」
「ふふ、ありがとう」


こんなにも幸せな感情をくれるのは、千秋さんだからで、千秋さんだから私はこんなにも満たされるのだろう。

探偵業をする必要はもうなくなったみたいだ。

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