恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
「どうしたの。桜子ちゃん!もしや、またアルバイト辞めさせられそうになってる?」
「…まさか。働きますよずっと」

アルバイトも全く集中できず、今日は二回もミスをしてしまった。
何度も謝ったけど倉田さんは怒ることもせずに心配してくれた。なんでも全力で、悩むことはしたくない性格だからこそ、悩まざるを得ないこの状況が辛い。

「あー、わかった。訳アリ結婚誰かにばれたんじゃない?」
「…え、」

その言葉に布巾を床に落としてしまう。
ゆっくりと瞬きをして今の彼の言葉を咀嚼する。どういうことだ。今の発言は冗談か何かだろうか。

倉田さんはどうしたの?と眉の間に力を入れる。

「ど、どうしたのじゃなくて…」
「何?変なこと言った?」
「言いましたよ!え?!訳アリ結婚って…」

うろたえる私をよそに彼は、あぁと平然と言ってのける。
あわあわと口を動かす私をまるで小さな子供でも見るように目を細めて言った。

「違うの?だっておかしいじゃん。お金に執着するわけでもない桜子ちゃんがスピード結婚って違和感があったし。それに旦那さんあんなにイケメンで金持ちなのにスピード結婚したい相手が高級クラブで働く女性っていうのも違和感がある。とすればだよ、例えばお互いの利害が一致して一緒にいるっていう方がしっくりこない?桜子ちゃん、会社が倒産して…とか言ってたよね?そのあとすぐに旦那さんと出会って結婚…妙だなぁって思ってた」
「…え、」
「まぁここまで長々と喋ったけど一番は俺の勘かな」
「勘…」
「僕は人を見る目はあるからね。自分の直感を信じてるんだよね~桜子ちゃんは顔採用だけど長く働いてくれそうないい子だと思ったから採用したよ。あ、一番は顔だけど」
「…は、はい…」
「で、どんな訳アリの結婚なの?」

観念したように息を吐いて彼を見据える。
倉田さんは意外と人を見ているのだろう。

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