恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
その言葉が何を示しているのかわからない私は眉をひそめた。
香り?別に香水なんてつけていないし…

と、ここまで考えてはっとなった。

「夏希、来たでしょ」
「っ」
「この香り、桜子のじゃない」


真剣な表情でそう言われて、私はなにも言えなかった。
何も言えないということは千秋さんの言葉を肯定しているようなものだ。

「…えっと、その…ほんの少しだけ寄っていかれました」
「俺が不在の時は家に入れないでって言ったよね?」
「…ごめんなさい、忘れていて」
「しかも、」

そう言って、千秋さんは私の腰に手を回して、ぐっと体を彼にあずけるような体制になった。

「このくらい至近距離じゃないとこんなに香りは移らないと思うんだけど?」
「…」

正解だった。

また無言の私に千秋さんは

「夏希は嫌じゃなかったんだ?」
「…いえ、そういうわけでは、」
「じゃあ、嫌だったの?」

そんな意地悪な質問をぶつける。
いつも余裕そうなのに今日は何かに焦っているような、そんな感じがした。



< 73 / 282 >

この作品をシェア

pagetop