優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
リビングのソファーにトラとライオンのぬいぐるみが置いてあった。

「あの時の!」

「置いておくって約束したからな」

「そうでしたね」

嬉しくて、ぬいぐるみを手に取り眺めていると、背後から壱哉さんが覆い被さるようにして抱き締めた。

「日奈子。改めて言うけど、一緒に暮らさないか?」

「は、はい。私でよければ」

「よかった」

耳元で壱哉さんがホッとしたような声で言った。

「壱哉さんでも不安なことがあるんですね」

「たくさんある」

たくさん?
なんでもできるのに?

「日奈子のことは俺が守る」

不思議そうに壱哉さんの顔を見上げていると、そっと顎をつかまれて、キスされた。
それはまるで誓いのキスのようで今までで一番特別なキスだった。
< 133 / 302 >

この作品をシェア

pagetop