キミを描きたくて
「ドジしちゃった〜」


そう笑って済ます9歳の私。
…ああ、あのころはちゃんと笑えてた。

ちゃんと、お兄ちゃんに嘘つけてた。

参観日に親が来ないからって虐められたって、お兄ちゃんを交換できなくて虐められたって。

家に帰ればいつもお兄ちゃんが出迎えてくれたから、私はちゃんと笑って嘘をつけてた。


心配そうに見つめる兄。
瞬きをすると、映像がまた変わる。


「何の絵かいてんだよ!…なにこれ、きもちわる!」
「イミフメーな絵かくとか、チュウニビョウじゃん!」

「こんな絵、捨ててやるよ!」


ビリビリと音を立てて裂ける、絵。
スケッチブックの絵はどんどん破かれて、私はそれを見てるだけだった。

別に、なんとも思わなかった。

お兄ちゃんが、褒めてくれるから。いつだって。
依茉の絵を早く飾って欲しいって。

ずっと、応援してくれてたから。

私の絵も理解できない凡人は、どうでもいいのだ。


「マジでコイツ表情変わんね〜!おもんな!」
「気持ち悪、人形かよ!」
「ほら、目覚ませよ!!」


青いバケツの中の臭い水がかかる。
それでも、夢の中の私は無表情だった。
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