キミを描きたくて
「今日は何、川にでも飛び込んだ?」

「よくわかったね〜!そうだよ」

「臭いし…待って、今お風呂沸かす」


びしょびしょで帰ってきた私。
兄は顔を顰めながら、それでも話をしてくれる。

どれだけ私が嫌な存在でも、彼はずっとそのままだった。


また視界が切り替わる。


「依茉、今日は何もしてない?」

「え?」

「転んだり、飛び込んだりしてない?」

「うん、してないよ」

「じゃあこれは何」


ランドセルを逆さまにすると、落書きだらけのボロボロの教科書。
兄が明らかに怒っているのに、気づかず私はケロッと話す。


「あー…自分でやったよ」

「自分で死ねだの消えろだの書くわけないでしょ、依茉が。言いなよ、いい加減」

「自分でやったの!ほっといて!」


ランドセルにまたぐちゃぐちゃのノートと教科書を詰め込んで、部屋ににげかえる私。
ガチャ、とドアの鍵を閉めて、兄が入ってこれないようにした音がする。


「はあ…ったく、どうすんだよ…」


頭を抱える兄。
…こんな顔、してたんだ。


「俺、もうすぐ居なくなんのに」


ポソッと呟く。
…この頃から、ずっと決まってたんだ。
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