キミを描きたくて
"紫月くんは私を離す気がない"。

でも、私は彼が離れようが別にそれがいいとさえ思う。
あの子は、作戦通りだったんだ。

そう、最初から私たちは似合わなかった。


「めんどくさいなあ、ほんと」


適当に公園のベンチに座る。
樹にも、ここに連れてきてもらったことがあった。

サッカーしようって言って、私が空振りまくったっけ。

大丈夫。
元の生活に戻るだけ。
今更、何も変わることは無い。


「…代わり、なんて無限にいるし」


そうつぶやく。
少しだけ、少しだけ心が苦しい。

でもそのうちきっとこの心の霧も晴れる。
苦しいと思うのは、何故。


「あ、花火、断らなきゃ」


冷静に、メッセージを送る。
急用ができた、とでも言おう。

1人で、ベランダで見よう。

きっと、来年はひとりじゃなくなるから。
今年の夏は、1人を楽しもう。

それが、楽だから。


《花火の予定、キャンセルで》。
そう簡潔に打つ。

普段ならすぐに返ってくるのに、既読は一向に着きやしない。

…まあ、これでいい。

これで、またお兄ちゃんと二人きりになれるのなら、学校でどうなろうがどうだっていいんだ。
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