キミを描きたくて
…それから、どれだけの時間公園で考え事をしていたのだろう。

曇っていた空も晴れ、月が見えていた。
欠けた、綺麗な月。


「綺麗、だなあ…」


その昔、人々は月の満ち欠けに永遠を夢見ていたと言う。
しかし実際は諸行無常で、昔よりも月と地球の距離は変わっている。

永遠、なんてない。

永遠の愛も、永遠の友情も、永遠の信頼も。
どれひとつお金で買えはしないし、どれひとつ続きなんてしない。

美桜ちゃんとも、きっと高校を卒業したりすれば会わなくなるはずだ。


「隼人くん」


頭に浮かんだ人の名前を出してみる。
…いいや、彼だって永遠に一緒にはいてくれない。

きっと、そのうち好きな人が出来て、その人にまた無数の愛を囁くようになるはずだ。

私に、愛なんてない。

だから、絵の具でぐちゃぐちゃにして、無かったことにして、パテを塗る。


「早く、終わらないかな…」


この夏休みも、この孤独感も、この劣等感も。
全部終わって欲しい。

早くこの非日常を終わらせたい。
こんな日常なんて求めていない。

兄がいて、絵を描いて、たまにアトリエに行く。

その生活が、愛おしいのに。
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