キミを描きたくて
Side Shizu
“きっともう、要らないでしょうから”
そんな言葉を、お湯を浴びながら思い出す。
兄が一人だけ、と言っていたように、このマンションには両親は住んでいないようだった。
さっき、服を取りに行くついでに部屋を覗かせてもらったが、なんとも生活感がなかった。
真っ白の壁、真っ白の床、布団、教科書が詰められた小さい本棚と机、椅子。
ゲームもテレビも、彼女が大好きな絵画を描くための画材でさえ見当たらなかった。
写真立てのひとつもなく、花瓶のひとつもない。
本当に、寝るためだけの家。
“あなたを、描かせてもらえませんか”
あの日、初めて見た依茉の顔。
存在すら知らなかった。
後に名簿を調べてわかったが、どうやら、絵の才能から推薦で入ったらしい。
友達に早見依茉を知っているかと聞いた。
5人中、5人が知っていると答えた。
その知名度は才能や順位ではなく、物珍しさと可愛さから来たものだった。
『早見依茉?あぁ、あの子可愛いよなぁ。』
『抽象画で中学のとき表彰されたって』
『確か、フランスと日本のハーフだったような』
『兄が一人いるんだっけ?今はパリらしいけど』
『早見依茉、ほんと付き合ってみたい』
その言葉に、単純に興味が湧いた。
そんな言葉を、お湯を浴びながら思い出す。
兄が一人だけ、と言っていたように、このマンションには両親は住んでいないようだった。
さっき、服を取りに行くついでに部屋を覗かせてもらったが、なんとも生活感がなかった。
真っ白の壁、真っ白の床、布団、教科書が詰められた小さい本棚と机、椅子。
ゲームもテレビも、彼女が大好きな絵画を描くための画材でさえ見当たらなかった。
写真立てのひとつもなく、花瓶のひとつもない。
本当に、寝るためだけの家。
“あなたを、描かせてもらえませんか”
あの日、初めて見た依茉の顔。
存在すら知らなかった。
後に名簿を調べてわかったが、どうやら、絵の才能から推薦で入ったらしい。
友達に早見依茉を知っているかと聞いた。
5人中、5人が知っていると答えた。
その知名度は才能や順位ではなく、物珍しさと可愛さから来たものだった。
『早見依茉?あぁ、あの子可愛いよなぁ。』
『抽象画で中学のとき表彰されたって』
『確か、フランスと日本のハーフだったような』
『兄が一人いるんだっけ?今はパリらしいけど』
『早見依茉、ほんと付き合ってみたい』
その言葉に、単純に興味が湧いた。