キミを描きたくて
昼休みに入ると、美術室へ走る。
昼休みは、美桜ちゃんと話せる幸せな時間。

美桜ちゃんとはクラスも違って、なかなか話せない。

部活も、美桜ちゃんは美術室で描くが、私はそうではない。
だから、なかなか話せる時間が無いのだ。



「美桜ちゃん」

「あ、ごめん依茉!委員会あるから今日食べれない!」

「そっか、わかった」



美術室に入る私と、通り過ぎる美桜ちゃん。
一緒に食べたかったな、なんて寂しくなる。

そんなとき、ピコンとスマホが震える。

ポケットの中から取り出すと、隼人くんからメッセージ。



隼人《依茉ちゃんもうお昼休み?》

依茉《はい、お昼休みです》

隼人《今日のことなんだけど、僕17時21時終わりのシフトだから》

依茉《分かりました。その時間に合わせていきますね》



そんなやり取りをしていると、急に手元からスマホが消える。

上を見上げると、会長が私を見下ろしていた。



「わっ...!」

「...誰?このひと」

「は、隼人くんは...し、知り合いです」

「へぇ、名前呼びね」


消していい?なんて荒々しく椅子に座って足を組み、片手にスマホを持って私を見る会長。

だめだ、だめにきまっている。

そもそも会長が人物画を断ったからわざわざ隼人くんに頼んでいるわけで。
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