キミを描きたくて
帰宅すると、全ての疲れがやってきて、制服から着替えることで精一杯だった。
会長にも、美桜ちゃんにも、隼人くんにも…誰にも、連絡できる気がしなかった。
どうしても、母の言葉が離れなかった。
「っ…私は、間違ってなんか」
視界が涙で滲む。
私が絵を描き続けることに、間違いなんてない。
だって、それが私の世界だから。
若い子がアニメやドラマの俳優を見て憧れるように、私は画家を見て憧れた。
いつか評価されること、それだけが夢だった。
いや、今だって夢だ。私には、絵しかない。
お母さんは、何も分かってくれない。
お兄ちゃんがいない孤独感も、お兄ちゃんの私物を捨てるということの決定を下せない訳も、一切分からなかった。
私は、本当に、絵しか愛せないのだ。
部屋に私のすすり泣く声だけが響く。
もう、本当はきっと分かりきっているのかもしれない。
ブーっ、スマホがなる。
目を向けると、会長からのメッセージだった。
紫月《早退したって聞いたけど、今家?》
《夜家行くから、また連絡する》
《食べたいものある?》
そんなメッセージすら返すことが出来ないまま、私は床に座り込んでしまった。