キミを描きたくて
「きゃー!紫月会長〜!!」


私の元に集まっていたはずの4人程度の部員は、みんな会長に集まる。
会長が見ていないのを確認して、私はそっとキャンバスを準備室に隠す。

…どうせ、文化祭に飾るし。見せる必要も無い。


「会長、これから依茉ちゃんとデートですか?」
「私たちファンとも話してくれること最近ないじゃないですか!みんなで出かけませんか?」
「私の絵見てくださいよー!」


キャッキャと騒ぐのが耳に悪くて、私は美桜ちゃんの手を取る。


「かえろ、美桜ちゃん」

「依茉?でも会長が…」

「私は美桜ちゃんと絵があればいいよ」

「…わかったわ。怒られても知らないからね」


会長たちがいる出入口とは反対から出る。
じっとこちらを会長が見つめている気がしたが、無視する。

…なんとなく、美桜ちゃんと話したかった。


「ねえ、私の行きつけのカフェがあるの。これから一緒に行かない?」

「依茉から誘われたのなんて初めてな気がする…行く!」


ニコニコ笑う美桜ちゃん。
私は、彼女が笑っていてくれて嬉しかった。

…樹に、よく似た笑い方。

私は、誰かが想像する数倍は、美桜ちゃんが好きだ。
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