キミを描きたくて
「行けばいいだろ」

「あっ…はい」

「もういい、依茉なんて知らない」

「か、会長…!こ、これ、これだけ持ってってくださいよ」


そう言って、宮崎さんから受け取ったラブレターを渡す。


「誰?これ」

「わ、依茉ちゃん!店長が急ぎでーって!早く行こう?」


隼人くんがまた割って入る。
会長は隼人くんを睨んだかと思うと、連絡する、とだけ言って帰っていく。

私たちには、平穏が訪れた。


「ご、ごめんね急にきちゃって…怒らせたよね、僕」

「まあ、元々今日機嫌悪かったから仕方ないですよ…それより、いかなきゃなんですよね?」


黒い軽自動車。
そういえば免許をとって、買ったと言っていたっけ。

助手席に乗り込んで、荷物を前に抱える。


「じ、実はさ。言いにくいんだけど…店長からって、嘘」

「え?」

「なんとなーくこう…依茉ちゃんにしかできない、相談があってさ」


僕ら付き合い長いでしょ、と言われてまあ…と頷く。
確かに、いつもは私の話を聞いてもらってばかりで、隼人くんの話なんて、聞いたことがない。
< 86 / 177 >

この作品をシェア

pagetop